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「心地よい場所への散歩」で第1回「健康をめざすアート公募展」優秀賞を受賞した落直子さんに好きな作家、制作に対するこだわり、公募展応募の動機を二人展開催中のミーツギャラリーで語っていただきました…

落 直子(おちなおこ)さん

落 直子(おちなおこ)さん

☆落 直子さんの…

好きな作家:以前はセザンヌが好きでした。今は長谷川等伯の「松林図屏風」から引き締まった緊張した空間を感じ、そして根津美術館にある鎌倉時代の「那智瀧図」(作者不明) は崇高な空気を感じさせてくれます。これらは私にとって作品制作におけるモチーフの要素になります。
私は元々、油絵を描いていました。それが今から約20年前、父が入院して付き添っていた時、ケーキや花をお見舞いで頂き、たまたま近くに鉛筆と紙があったので、それらを何気なく描き始めたら面白くて、輪郭的に線で描く楽しさが心に芽生えてしまったのです。以後、線で描き続けていたら、私としては洋画は線だけでなく面を塗って表現するイメージ、一方で日本画は線を基調にした表現と捉え、そして日本人独特の空気感や空間表現で更に日本画を意識するようになりました。
だから初めは色を塗ることなくペンで線だけを描いていたのですが、線に加えて空間を色で埋めると作品に抑揚が出ると思い、筆で描くようになりました。そうしたことを続けていたら、セザンヌの一面を理解できた気になったのです。彼は「自然を円筒、球、円錐によって扱う」と話しています。ということはモチーフを簡素化して描いていたはずだから、彼も線を意識していたんじゃないかと思い至ったわけです。これって線を基調にして「丸三角四角」を描いた江戸時代後期の禅僧で画家の仙厓義梵に通じる気がします。作品制作をする姿勢に国境はないのかもしれません。

こだわり:私は旅するように描いています。絵に込めるのはdejavu(既視感)、日常と非日常のハザマの微妙なずれ、記憶とか思い出の中にある曖昧な風景を再現して行けたらなと思っています。実際、描く時には心の中をあっちこっち見て、イメージを探しながら歩いている感覚です。視点を変えると心象風景の地図を描いている感じかもしれません。だから遠くから私の作品を観ると抽象ぽっいけれど、近寄るとバックや靴や花、そして私が時空間を移動できると考えている階段などが描かれているのがわかります。それらを旅するように観ていただけたら嬉しいです。
技術面では、かなり前から蛍光顔料の不協和音的発色が好きで使っていましたが、ブラックライト(紫外線ランプ)を照らすと光って観えるのを知ったのは、自宅に雨漏りの修理屋さんが来た約10年前のこと。その時はかなり驚き、自作品に二面性があったことを理解しましたが、今も自然に蛍光顔料を使って描いています。だから、機会があればブラックライトの光でも私の作品を観ていただきたいですね(笑)。

「健康をめざすアート展」について:時々ネットで公募展を検索します。理由は作品制作の目標があるとモチベーションが上がるからです。それで「健康をめざすアート展」はたまたま見つけましたが、私自身も小学生の頃ネフローゼで入院生活をしていたことがあり、その時に窓から見た自由な鳥の姿を今も覚えています。それも応募のキッカケの一つかな。結果、優秀賞をいただき、銀座で二人展ができたのは良い経験でした。とにかく、これからも健康に気をつけ、私らしい作品制作を続けて行きたいです。

(2024/01/24 取材・撮影 関幸貴)


プロフィール

落 直子(おちなおこ)さん
◆落 直子(おちなおこ)さん。
アーティスト(Painterと彫金)
甲南女子大学人間関係学科教育学卒業
STUDIO HANDS KOHDA で彫金鋳金鍛金を学ぶ
田中千代服飾専門学校にてファッションを学ぶ
松井憲作氏に師事

近年の活動歴
<受賞歴>
2023:TRAD「アートと泊まるプルジェクト」ホテル若水(宝塚)
2023:第1回健康をめざすアート公募展 「心地よい場所への散歩」で優秀賞
2023:美の起原展 [ クサカベ賞 ]
2019:国際芸術コンペアートオリンピア 2019 [ 準佳作 ]
2016:N.Y.チェルシーインターナショナルファインアート [ プロファイル賞 ]
<個展>
2022:川田画廊(神戸)
2021:ANA クラウンプラザホテル ART LIVE KOBE(神戸)
2020:PIAS ギャラリー (大阪)
<グループ展>
2024:健康をめざすアート公募展 優秀賞二人展 Meets Gallery (東京)
2023:美の起原展 入賞作品展 (東京)
2019:Art Basel Miami Beach (Art Fact in N.Y.)
 
30年来の彫金友だち 大西麻由さん 彫金作品「銀の犬」 受賞作「心地よい場所への散歩」 受賞作「心地よい場所への散歩」(ブラックライト)

 

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