アトリエ 訪問

 


静かな雨の降る4月上旬、横浜元町の小さなカフェで、写真家の藤間久子さんに好きな作家とこだわりについて語っていただきました。

藤間久子(ふじまひさこ)さん

藤間久子(ふじまひさこ)さん

☆藤間久子さんの…

好きな作家:職業フォトグラファーとしての師は森日出夫先生ですが、20年以上前に一番最初に興味を持った写真家は森山大道さんです。当時、私は東京で出版関係の仕事をしながら、休日になるとコンパクトカメラで植物や風景など好きな被写体を気ままに撮影していました。そんなある日、何気なく入った池袋の小さなギャラリーで見つけ、即買いしたのが森山大道写真集「水の夢」でした。写真集の内容は日本中の川と橋などを森山さん独特の視線で捉えたもので、値段もかなり高かったのですが、掲載されていた2枚の写真をどうしても自分の手元に置きたかったので購入を即決しました。そして、何故二つの川に惹かれたんだろうと思いながら、改めて写真集で撮影場所を確認したら、なんと二つとも私の故郷である岡山県を流れている川と分かり、それを知った瞬間は不思議な衝撃を受け、ただただ驚きました。以来、森山さんで知った写真の魅力に誘われて銀座の写真展を覗くようになると東松照明さんも知るようなり、彼の戦争に関連した写真を観た時には印象があまりに強烈で汗が出て止まらなくなったほどでした。
そうした記憶があるのも当時はフィルム全盛期、モノクロの場合は写真家が撮影からプリントまでやっていてインプットとアウトプットが同じだからこそ、写真のイメージが観る側にかなりストレートに伝わって来たからだ思います。細かく考えると、モノクロではグラデーションを大事にして繊細さを表現しているからこその深さがあるし、フィルムは枚数が決まっていて、デジタルのように延々と撮り続けられないからこその緊張感も強く作用したのかもしれません。だから私もフィルムのエッセンスをデジタルに反映するため、あえて「撮影枚数は残り2枚しかない」と想定して自分自身に緊張感を与えて撮影する場合が時々あります。

こだわり:こだわりというか撮影時に心がけていることはあります。仕事の場合は「いつでも聴く姿勢」でいること。例えば、インタビュー中を撮影する場合は、必ず取材対象者の話を聴き、時には相槌を打ちながら撮り進めます。また、インタビューじゃない場合も、取材相手の話には細かいところにまで耳を傾け、情報を入れると同時に相手の緊張をほぐしながら、コミュニケーションをとって場の雰囲気を和らげ、撮影するようにしています。
でも、プライベートの場合は全く逆。私的には自然を撮ることが多いので、風とか鳥の囀りを聴きながら自然と一体化して撮りたいのでどうしても寡黙になりますが、撮影が一旦終わってしまうとそうではありません。1年に何回かカメラを持って一人旅をしますが、撮影の合間の食事の時や宿では色々な方と積極的にお話をするようにしています。そうすることで生の地元情報と感覚が得られ次の撮影に良い影響を及ぼすからです。加えて、一昨年ぐらいから、やっと一人飲みができるようになったので撮影の幅がこれから広がりそうな気がします(笑)。

撮影協力:横浜市中区元町2-50 provence cafe

(2024/04/03 取材撮影 関幸貴)


プロフィール

藤間久子(ふじまひさこ)さん
◆藤間久子(ふじまひさこ)さん
フォトグラファー
(株)アマノスタジオ所属
JPS(日本写真家協会)所属
岡山県新見市生まれ
日本ジャーナリスト専門学校卒業

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愛用カメラ 愛読書 撮影を担当した「四季彩の杜」 「四季彩の杜」の「春の小川」

 

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