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良く晴れた2024年1月上旬、横浜・新子安の GALLERY KASE で個展開催中の加藤力之輔さんに、昨夏久しぶりに戻ったスペインを語っていただきました…

加藤力之輔(かとうりきのすけ)さん

加藤力之輔さん

☆加藤力之輔さんの…

マドリードでの生活:2020年からのコロナ禍もあり、昨夏、京都から横浜に転居するのを機に4年半ぶりにスペイン/マドリードに戻りました。滞在は2023年7上旬から約3ヶ月、その間、雨が降ったのは僅か3日だけ。それも通り雨だったので、いつも僕はスペインの青い空に包まれていました。また、マドリードは7つの丘に囲まれた海抜650mの高地なので、朝晩は20度以下になるけれど 昼には40度を超えるなど一日の温度差が凄くあり、体力温存のためにシエスタ(昼寝)の習慣が生まれたことを再認識しました。また以前に比べて街からゴミが減ったマドリードでは、LINEでしか会えなかった家族との一家団欒の暮らしに加え、7月と9月の平日16時から22時まで美術研究所で人体デッサンに励んでいました。以前、夏の時期の研究所の活動は小規模でしたが、現在は国や市、民間企業の支援もあり授業料も安く、通常のカリキュラムを行っていました。年齢を重ねても、こうしたデッサンの機会に臨めたのはありがたかったです。

スペイン南北の旅:活動範囲はマドリードだけでなく、滞在中に国内を3回旅しました。まず8月後半は、長年の友人が運転する車でバスク地方のビトリアとログローニョへ2泊3日の旅。滞在は現地のお屋敷での民泊「ルワール」、快適でした。加えて印象に残ったのが食事の美味さです。昔から「食はバスクにあり」と言われていますが、身を持ってそれを体験しました。高いお金を出して美味しいのは当たり前ですが、安い定食でも丁寧に作ってあるのが分かり、料理を口に含むと思わず笑顔になりました。バスク地方では農地改革の影響で小作の農家さんが多く、昔ながらのやり方で野菜を作っているので、材料の良さ新鮮さもあるんでしょうね。今でも離れた村へ行くと1階が牛舎、2階には人が住んでいる農家さんもあるそうです。
9月後半から10月にかけてはアンダルシアへは2回に分けて好きな長距離バスで向かいました。1回目は海岸沿いで雰囲気は良いアルメリア、かつて映画「アラビアのロレンス」やマカロニウェスタンを撮影地として名を馳せましたが、今は世界的観光地で近くのマラガは有名な避暑地、たくさんのお金持ちが訪れるそうですよ。でも、僕が気になったのは高速バスの少し高い車窓から見た「プラスチックの海」と称され、延々と続くビニールハウスの栽培農園です。聴けば2017年の統計で温室総面積は、12,647ha 大阪市の約55%にあたる広さがあるとか。温暖な気候と海水の淡水化、エネルギーも風力と洋上発電で賄い、EUの一大野菜供給地になっているそうです。
アンダルシアの旅2回目のムルシアは、20年ぶりの地でお会いしたい方がいたのも再訪の理由で、再会も叶いました。そして、地中海と一緒になったアンダルシアの空は素晴らしく、セルリアンブルーの絵の具を絞った青い空を体感、その想いを筆に込め描きました。
若い頃、南を訪れた時、街をちょっと出ると石がゴロゴロした荒野でしたが、今では高速道路に沿ってずっとオリーブ畑が続く光景に様変わり。すっかりスペインが豊かになったのを肌で知りました。加えて、4年半ぶりのスペイン滞在でしたが、終始センチメンタルになることはなく、彼の地の新たな魅力に捉われ続けた僕でした。


(2024/01/06 取材・撮影 関幸貴)


プロフィール

加藤力之輔さん
◆加藤力之輔(かとうりきのすけ)さん
画家。
1944年横浜市生まれ。1972年からスペイン国立プラド美術館で4年間〈ティツアーノ〉を模写研究。マドリードの美術研究所で人体デッサンの修練でモノの見方を学び続ける。 スペイン、日本で作品発表。横浜市民ギャラリー、印象社ギャラリー、文藝春秋画廊、小川美術館(東京)、同時代ギャラリー(京都)、ギャラリージタン館(鎌倉)等。 2004年より覚園寺(鎌倉)・新善光寺(京都)・梅上山光明寺(東京)で「異文化空間展」開催。NHK日曜美術館等に出演。現在、横浜在住。
 
加藤力之輔作品 図録/ポストカード等 アンダルシアの夕陽(加藤力之輔さん提供) 車窓からのオリーブ畑(加藤力之輔さん提供)

 

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